個人と法人のメリット・デメリット

社会的な信用という点では、法人の方が勝るでしょうが、税金面での損得でいえば、ケース・バイ・ケースです。

個人事業と会社に係る税金には、次表のような違いがあります。

  個人 法人
社会保険の加入 常時使用する従業員が5人未満であれば、社会保険への加入は任意となっています。 従業員を雇っていなくても、役員報酬を支給する際には社会保険への加入が義務付けられています。
社会保険料は厚生年金と健康保険料の2つを会社と従業員が折半で負担する仕組みです。
信用度 個人だと公的に情報を確認することができないため、法人よりも信用度が劣るとされています。 登記簿謄本によって公的に法人の存在を確認することができるため取引先や金融機関からの信用を得られやすい。
消費税 前々年の課税売上高が1,000万円以下であれば、納税義務が免除されます。 株式会社は、設立当初2年間の納税義務の免除はありません。
(中小企業は、設立当初2年間は納税義務が免除されます。)
国税の税率 所得税は5%から45%の7段階の超過累進税率。
所得が上がるにつれ、税率がどんどん高くなります。
法人税は23.2%の比例税率。
所得にかかわらず同じ税率で課税されます。
中小企業の場合は軽減税率があります。
住民税の税率 標準税率は10% 兵庫県は法人税額の3.2%
尼崎市は法人税額の9.7%
社長の報酬 全額個人の事業所得となり、給与所得控除の適用はありません。 役員報酬は給与所得控除の適用があります。
家族への給与 原則として家族に給与を支払えません。
青色事業専従者給与として税務署へ届出をした場合にのみ認められています。
実際に事業に従事していれば、労働の対価として相当と認められる金額を家族に給与として支払うことが可能です。
所得分散をして経営者の所得税、住民税を節税することが可能になります。
交際費 事業に必要とされるものは、金額のいかんを問わず、すべてを必要経費に算入することができます。 損金算入に制限があります。
中小企業(資本金1億円以下の法人)の場合年間800万円まで損金算入できます。
退職金 事業主本人や家族従業員(事業専従者)に対して退職金を支給しても必要経費に算入することはできません。 社長を含め、適正額であれば損金算入できます。
決算月 12月と決まっています。
1月1日から12月31日の期間の事業活動の収入と支出を整理して決算し、確定申告を行うことになります。
自由に決算月を決めることができます。
業務の分散をはかるために繁忙期を避けたり、売上が安定している月を決算月にすることにより節税対策をしやすくなります。
事業税 年間の所得が290万円以下であれば個人事業税を納税する義務はありません。
所得金額が290万円を超えている場合の標準税率は5%。
事業主控除はありません。
標準税率は
・年400万円以下の所得には3.4%
・400万円超800万円以下の部分の所得には5.1%
・800万円超の部分の所得には6.7%。
赤字の場合 青色申告者は純損失を3年間繰り越すことができます。
また、純損失の繰戻し還付を受けることもできます。(白色申告者は、特別な場合を除き、純損失を繰り越すことができません。)
欠損金は10年間繰り越すことができます。
繰戻し還付も受けられます。
赤字の場合でも法人住民税の均等割額の納税義務があります。
融資 どれだけ貸しても大丈夫かが明確にはわからないので、法人に比べて融資条件が厳しくなります。
第三者保証人を要求されることが多いです。
個人と会社が区別されていること、また、経理内容が明確になっていること等により、個人事業者よりも融資が受けやすくなります。
ただし、融資を受ける場合は経営者の保証等を求められることが多いです。
責任の範囲 個人事業主だと、責任の範囲が「個人」になるため、万が一損害賠償を請求された時に、個人の財産を失う可能性があります。 法人であれば、責任の範囲は「法人」になるため、万が一損害賠償を請求されても、個人の財産は対象にならず、失うことはありません。
その他の事項 利益は個人で自由に使うことができます。 利益は個人で自由に使うことができません。
個人の用途に使ったときは、個人への給与や貸付けとなります。
会社は設立時に登録免許税が、役員改選時に登記費用がかかります。


◎個人と法人の税制上の大きな違い

 法人化したときの税制上のいちばん大きな違いは、事業上の利益が、個人のときは、個人所得として課税されていたものが、法人にすると、役員報酬と法人所得に分散して課税されるということです。

 どちらの負担が大きいかは、事業上の利益の額や、役員報酬の取り方によって異なりますが、個人の事業所得であったものがそのまま、社長としての給与所得になったときは給与所得控除がある分、所得税が低くなります。

 

【計算例】
 事業の利益は1,500万円、所得控除は基礎控除だけと仮定します。

●個人事業に係る所得税
 (15,000,000円-380,000円)×33%-1,536,000円=3,288,600円

●社長の給与所得に係る所得税
 15,000,000円-2,200,000円=12,800,000円(給与所得)
 (12,800,000円-380,000円)×33%‐1,536,000円=2,562,600円

となり、給与として課税された方が所得税の負担は少なくなります。

ただし、利益は毎年変動しますし、利益の全額を社長の給与にすることはできませんから、このような比較は、1つの目安にすぎません。
また、利益の額によっては、個人の所得税は低くなっても、他の負担が増えるケースもあります。